ぐりまの読書日記

読書が好きです。本の感想など。

大人になっても読みたい!海外ファンタジー5選

今週のお題】今こそ読書感想文

皆さんは、子供の頃、海外のファンタジーを読んでいたでしょうか。
ハリーポッターに、ダレン・シャン、黄金の羅針盤デルトラ・クエスト…。
面白い海外ファンタジーは、数えてみれば山ほどあって、幼い頃、時間を忘れて読み耽ったけれども、いつの間にか読まなくなってしまった、という方も少なくはないと思います。
そんな海外ファンタジーは、大人になった今だからこそ、久しぶりに読んだら意外と夢中になれるのかも…。

ふとそんなことを考えて、今日は、大人になっても夢中になれる海外の児童文学を、気ままに紹介したいと思います。


バーティミアスシリーズ」(1〜3巻)
(ジョナサン・ストラウド)
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あらすじ
魔術師が、異界から妖霊を召喚し使役することで、圧倒的な権力を持つ世界の物語。
年老いた魔術師の家で魔法修行に励む少年、ナサニエルは、ある日、エリート魔術師ラブレースに恥をかかされてしまう。ナサニエルが復讐のために呼び出したのは、バーティミアスという5010歳の妖霊だった。バーティミアスナサニエルは、ラブレースへの報復を企むうちに、魔法界を揺るがす大きな陰謀へと巻き込まれていく……。

まずは一作目。「バーティミアス」三部作。
なんと言っても魅力的なのは、バーティミアスの存在である!
5段階ある妖霊の等級の中で、3段階目の「ジン」にあたる彼は、それほど飛び抜けた力を持つわけではない。しかし、古代エジプトの歴史書にも登場するほどの由緒正しき(?)活躍をしてきただけあって、悪知恵と、狡猾さと、ユーモアと、プライドと、口の悪さだけは、バーティミアスの右に出る者はいないのだ。
純真な少年ナサニエルが、この憎めない妖霊バーティミアスとタッグを組んで(使役して)、陰謀へと立ち向かう1巻は、バーティミアスと妖霊仲間との丁々発止のやり取りも相まって、大変楽しい。

さて、純真だったナサニエル少年だが、2,3巻では、既に心の汚いエリート魔術師達の仲間入りをしてしまっている。権力は人を変えてしまうんだな…。
生来おちゃめなバーティミアスも、ナサニエルに度々呼び出され、こき使われて疲弊しているのがなんだか悲しい。
しかし、安心してほしい。ナサニエルと、使役される悪魔バーティミアスとの、なんとも形容し難い絆は、物語が終わるまで、しっかり続いていく。

3巻で、この二人が迎えるラストはもう、なんというか、ネタバレになるので詳しくは書けないけど、ものすごい。こんなに楽しくて、こんなに切ない余韻の残るファンタジーを、私は他に知らない。



「古王国記シリーズ」(1〜3巻)
ガース・ニクス
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あらすじ
サブリエルは、ネクロマンサーを父に持つ、18歳の女学生。アンセルスティエールの学校で、寄宿舎生活を送っていた。卒業間近のある日、父アブホーセンが仕事で使っていたはずの7つのベルが、サブリエルの手元に突然届けられる。父に抜き差しならない事態が起こり、道具を娘に託したに違いない。
そう考えたサブリエルは、姿を消した父を探し出し、魔法道具を届けるため、魔法が息づき、死者と魔物が跋扈する地、古王国へと赴くー。

『サブリエル』は、ダークファンタジーである。
古王国と隣接する町、アンセルスティエールの学校では、成績優秀、冷静沈着で、魔術の腕前もピカイチだったサブリエルだが、古王国では、右も左もわからず孤軍奮闘し、魔物やら死者やらしゃべる猫やらに振り回されるのが印象的。
あの世とこの世のあいだにある世界、冥界の描写が興味深い。人の魂は、人の体を抜け出ると、冥界の川に流され、9つの門を一つ一つくぐり抜けていくのだ。9番目の門をくぐった者は、二度とこの世に帰ってくることはない。
死を恐れる者は、肉体が死んでも、何度も冥界の川の流れに逆らってこの世に戻り、他の人間の肉体や動物などに取り憑いて、魔物となる。そんな死霊を、自然界の摂理通り、冥界の奥へと戻してやるのがネクロマンサーの役割。様々な魔法や、7つのベルを駆使して、死霊と戦い、時には冥界を歩き回る。
この7つのベルというのがなんともまた魅力的なのだ。ベルにはそれぞれに名前と役割がある。例えば、サラネスというベルは、大きくて低い音を鳴らし、聞いたものの行動を縛る力がある。ランナは最も小さいベルで、聞いたものを眠らせてしまう。中には、音を聞いた者を、冥界の第九の門の奥へと、永遠に送り出してしまうものもある。
ベルによって、扱い易いものもあれば、注意が必要なものもあり、めったに使わないようなベルもある。主人公のサブリエルが、状況を判断しながらベルを使い分け、魔物に対峙する姿がかっこいい。

なお、古王国記シリーズは、2巻『ライラエル』、3巻『アブホーセン』へと続く。巻を追うごとに、物語はより世界の成り立ちに関わる話に入り込んでいく。



『バウンダーズ この世で最も邪悪なゲーム』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
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あらすじ
イギリスのロンドンに住んでいた、ごく普通の少年ジェイミーは、ある日、「あいつら」の邪悪なゲームに巻き込まれ、様々な異世界を放浪する「バウンダーズ」となってしまう。あるときは海の上、あるときは戦いの国、数々の異世界を、一人孤独に旅するジェイミー。そんな彼が、自分以外の「バウンダーズ」に出会ったとき、事態が動き出すー。
果たしてジェイミーは、「あいつら」のゲームを終わらせて、もといた世界へと戻ることができるのか…?

ダイアナ・ウィン・ジョーンズといえば、イギリスファンタジーの名手。『クレストマンシー』シリーズや、『花の魔法 白のドラゴン』、『私が幽霊だったころ』、『九年目の魔法』など、著書は多数ある。ジブリ映画で有名な『ハウルの動く城』の原作『魔法使いハウルと火の悪魔』も、彼女の作品である。
そんな、ファンタジーの女王と言われるジョーンズの作品の中で、ちょっと暗い色彩を放っているのがこの『バウンダーズ』。主人公ジェイミーの、淡々とした一人称の語りで、物語が綴られる。
ものすごく悲惨な場面とかがあるわけではないし、主人公達が協力して悪に立ち向かう、胸熱な話ではあるのだけれど、なんだか孤独で、乾いた雰囲気が全編に漂う。この空気感がなぜかクセになり、一時期何度も読み返した。
孤独な旅人「バウンダーズ」達を作り出している元凶「あいつら」の存在については、あまり具体的に詳細には描写されず、結局正体も不明なのだが、それがまた不気味さを醸し出す。
終盤、伏線が回収される箇所の緊迫感には、何度読んでも息を飲まされた。



ナルニア国物語」(1~7巻)
(C・S・ルイス)
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あらすじ
ある日、4兄妹の末っ子ルーシーは、お屋敷の中で、衣装だんすの向こうの一面の雪景色へと迷い込んでしまう。そこは、もの言うけもの達や、妖精や、伝説の生き物が息づく異世界ナルニアだった。
何百年もの間、白い魔女に支配され、雪が降り続くナルニア。邪悪な魔女の支配を終わらせるため、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーは、ナルニア国の仲間たちと共に立ち上がるー。

言わずと知れた、イギリス児童文学の名作、ナルニア国物語。私達の住む世界とは異なる世界、ナルニアを舞台に、世界が誕生してから滅びるまでを描いた年代記である。衣装だんすを くぐり抜けたら雪の降る異世界に迷い込んでしまう冒頭部分は、あまりにも有名だ。
キリスト教の思想に根ざした、勧善懲悪ものの物語で、善と悪がはっきりしているため、子供でも安心して読める内容である。しかし、予定調和でお説教臭いだけの物語だと思ってはいけない。随所に、作者の心象風景とでも言ったらいいのか、そこはかとなく恐ろしい場面が散りばめられているのが魅力的なのだ。
例えば、第6巻『魔術師のおい』で、この巻の主人公ディゴリーとポリーが、滅びの都チャーンへと迷い込む場面。
年老いて大きくなった太陽のもと、生きて動くものが何もいない崩れかけた街並みや、歴代の支配者と思われる像たちの顔つきが、最初は善良そうだったのがどんどん邪悪になっていく様は、不気味という他表現のしようがない。
『朝びらき丸東の海へ』然り、『銀のいす』の地底の世界然り、『魔術師のおい』や『さいごの戦い』然り、思えばナルニア国物語は、世界の果てや、世界の終わりに、強く焦点が当てられた作品なのかもしれない。



ホビットの冒険』(上下巻)
(J・R・R・トールキン
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あらすじ
ホビット庄で至極平和に暮らすホビット、ビルボ・バキンズのもとに、ある日、魔法使いガンダルフが訪れる。ガンダルフは、その昔ドワーフから財宝を奪った竜スマウグを倒すため、共に冒険に出てほしいというのだ。
突然の頼みに戸惑うビルボ。そうこうするうちにドワーフ達がやってきて、ビルボは「忍び」として、彼らと旅に出ることに。
トロールの住む山、ゴブリンの湧く山脈、暗闇の支配する森…。数々の危機をくぐり抜け、ビルボ達一行は、竜に奪われた宝を取り戻すことができるのか…?

ハリウッドで映画化され大ヒットした『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚にあたる作品。ガンダルフ、ビルボ、ゴクリ(ゴラム)や指輪など、『ロード・オブ・ザ・リング』につながる要素はすでに、この『ホビットの冒険』に登場している。
霧降り山脈で、ビルボの悪夢が現実になる瞬間や、暗闇の中での命をかけたなぞなぞ対決とか、全編に渡ってスリル満点の物語だ。
スケールの大きさで言えば、やっぱり、『ロード・オブ・ザ・リング』が数段上だと思うけど、原作の読みやすさや楽しさで比べたら、こちらの『ホビットの冒険』の方に軍配が上がる気がする…。

しがないホビットだったビルボが、旅が進むにつれて、忍びとしての才覚を徐々に顕していくのが楽しい。彼の大胆さと、平和を愛する性質は、難しい局面で、誰も予想もしないほどの大きな役割を果たすのだ。一体全体なぜガンダルフは、隠居老人みたいに暮らしていたビルボを、旅の一員としてスカウトしたのだろうか。いくら考えてもわからないけど、そのガンダルフの慧眼にはあっぱれと言う他ない。



…懐かしくて読み返したい本や、気になる本があったでしょうか。
お家タイムが続く中、久々に童心に帰って、ファンタジーの世界に夢中になるのもいいかもしれませんね!今週のお題「読書感想文」