ぐりまの読書日記

読書が好きです。本の感想など。

なかなか完結しないシリーズ(後編)

めちゃくちゃ面白くて続きが気になるけど、何年経っても何十年経っても完結しないシリーズってあるよね。
半分諦めながらも、ネットで新作情報を定期的に検索してしまったり、10年越しの続編刊行に歓喜したり。
そんな、私たちを虜にしてやまないシリーズたちを紹介する、「なかなか完結しないシリーズ」の後編です。

(誰も読んでる人いないと思うけど、なかなか完結しないシリーズ(前編)という記事を数年前に公開しており、その後編記事をやっと今回出せたという次第…。)


『図書館の魔女』シリーズ(高田大介)


大人になると、夢中になって読めるファンタジーシリーズに出会うのって、なかなか難しいことだと思う。私がそんな稀有な出会いをできたのがこの「図書館の魔女」シリーズ。
この本に関しては個別でも紹介しているので、詳しい説明はそちらに譲るが、「剣や魔法ではなく言葉の力で世界を変える」がキャッチフレーズの、世界観がめちゃくちゃ作り込まれた、しかも「ボーイミーツガール」という、知的好奇心もエンタメ要素も満たしてくれる作品である。

今までに出ているのは、『図書館の魔女』(文庫版だと全四巻)と、スピンオフ的な内容の『烏の伝言』(文庫版上下巻)で、本編の続編としては『霆ける塔』の刊行が予告されているのだけど、この『霆ける塔』が、なっかなか出ない。
私の持っている『図書館の魔女』文庫本の帯には、「2017年刊行予定」と書いてあるのだけど、あれ?刊行予定年からもう五年以上経ってる?
この続編に関しては、私の知る限り最近は音沙汰がなくて、ちなみに作者の高田大介さんは今、『記憶の対位法』という作品を、東京創元社の『紙魚の手帳』に連載中。未読だけど、「多声音楽の誕生を巡る長編ミステリ」とのことで、これまた、どこからそんな知識が湧いてくるんだ…と言いたくなるようなニッチなテーマだ。本になったらこれも絶対読みたいな。

ともあれ、そんな長編ミステリを書いてるくらいだから、『霆ける塔』の刊行はまだまだ先かな、とちょっと悲観している私である。
『図書館の魔女』の中で物語は一応ひと段落しているのだが、まだまだ解決していない問題がたくさんあって、ラスボス的な人も倒せていないしで、続編もけっこうな大作になる見込み。いつ出るのかな。楽しみだな。


古典部シリーズ(米澤穂信

私の中で地味に気になっているのが「古典部シリーズはいつ完結するんだ」問題である。
古典部シリーズ」は、「省エネ主義」をモットーに掲げる高校生の折木奉太郎を主人公とする、日常の謎系ミステリだ。
彼が高校入学を機に古典部に入部し、旧家のお嬢様千反田える、中学からの同級生の福部里志伊原摩耶花と、古典部の活動に勤しんだり、学校生活に潜む謎に挑んだりする様子が描かれる。
中には長編の巻もあるが、一話完結型の連作短編集的な趣が強いシリーズだと個人的に認識している。
ただ、名探偵コナンとか、サザエさんなどのような、登場人物が永遠に歳を取らずに様々な事件に出会いながら一年をループするタイプの物語と異なる点は、時間の流れがしっかりと設定されていることだ。
折木ら主要登場人物が高校入学して間もなくの春に物語が始まり、巻を追うごとに季節は夏から秋、冬へと流れ、学年も上がる。最新作『いまさら翼といわれても』では、折木たちが2年生の夏休みのエピソードが収録されている。
古典部メンバー同士の関係性も、ゆっくりと変化(進展?)していくのが味わい深いのだ。

しかし、ここで問題にしたいのが、シリーズが刊行されるのにかかった年数である。
シリーズ第一巻『氷菓』が刊行されたのが2001年。
最新作『いまさら翼といわれても』の刊行が2016年。
入学してから高2の夏までの一年半弱を描くのに、15年かかっている。
そんな単純な話ではないかもしれないが、もし仮に、古典部シリーズの完結が、奉太郎たちが高校を卒業するときだったとして、高校生活の残りの一年半を書くのに同じ年数だけかかるのだとすれば、シリーズが完結するのは2016年から15年後の2031年頃という計算になる。
あと7年もかかるのか、という思いにもなるが、それはまだ楽観的な予測にすぎない。
直木賞や数々のミステリー関連の賞を受賞し、超売れっ子作家になった作者、米澤穂信さんは、古典部シリーズ以外にも幅広い作品を執筆している。
古典部シリーズに割く時間は、デビュー当時に比べたら必然的に少なくなっているだろう。
次の巻が今から数年以内に刊行されるのかも定かではないし、完結には今の時点からあと15年くらいかかっても全く不思議ではないと思う。
あと15年後……。となると、作者の米澤さんはおいくつになられるのだろう。
いや、その前に、私はその頃何歳だ?
と考え始めると、なんだか気が遠くなってくる。
そんなに歳を取った頃に古典部シリーズを読んで、今と同じ気持ちで楽しめるのだろうか…。
心配にはなるけれど、考えてみれば、私が古典部シリーズを読み始めたのも10年以上前だったわけで。
その頃と今とで何か意識が変わったり、ものすごく大人になったりしているかといえば、そんなこともない。意外と昔と同じような本を読んで、同じように楽しんでいる。
時が経っても、人間そこまでものすごく変わることなんてないのかもしれない。

さて、本シリーズにおいて、折木と千反田の関係性が今後どう変化していくかはとても気になるところ。
その他にも、後輩大日向の抱える問題や、彼らの各々の進路、摩耶花たちの「伝説の一冊」など、大きく広げられそうな風呂敷はたくさんある。
古典部員たちの未来がじっくりたっぷり描かれることを、楽しみに待ちたい。

 


十二国記小野不由美


「いつまでも完結しないシリーズ」といえば、真っ先に思いつくのが十二国記である。
2019年に、長編としては18年ぶりに刊行された『白銀の墟 玄の月』。
これに関しても、別の記事で感想を書いているので、ここでは詳しくは触れないが、とにかく待ちに待った新刊だった。

さて、新作長編が刊行されて、一段落ついた感のある「十二国記」シリーズ。今後新たに長編が刊行されるのかは不明だが、短編集の刊行は予告されている。
一段落ついた戴の物語の、落ち穂拾い的な短編集になるとのことだ。

この短編集、もとはといえば、2020年内の刊行予定だったはずなのだが、2024年の今になっても、まだ発表される気配がない。
早く読みたいとは思うけれど、前作『白銀の墟 玄の月』を10年以上待った身としては、もはや「生きているうちに読めたらいいかな」と悟りを開いた気分である。
長編の中で語り切れなかった物語が読める日を、気長に、でも首を長くして待ち続けたい。

 

いかがだったでしょうか?

新刊がなかなか出ないのはつらいけど、その分ついに読めた時の感動は言葉にできませんよね!

もし気になった作品があれば、ぜひ手に取っていただいて、続編を待つ苦しみと楽しみを味わっていただければと思います。