ぐりまの読書日記

読書が好きです。本の感想など。

『いつかの岸辺に跳ねていく』加納朋子 感想

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あらすじ
護(まもる)の幼なじみ平石徹子は、昔から少し変わった行動をする子だった。見知らぬおばあさんに突然抱きついたり、授業中に急に涙を流したり。自分のおかしな行動の理由を決して人には話さない徹子だが、彼女が誰にでも公平で優しい心を持っていることを、護は知っていたー。
徹子の歩む人生と、彼女の抱える秘密を、前半は護の視点から、後半は徹子自身の視点から描く長編ミステリ。


数ある加納さんの作品のうち、私の中での不動の一位は『コッペリア』だったけど、今回その順位が変動したかもしれない。
そう思えるくらい優しい本だった。

決して自分の悩みを人には話さない徹子と、熊さん的ポジションであり良いやつである護との、「幼なじみ」という関係性が何とも微笑ましい。
また、加納作品には珍しい、根っからの悪役「カタリ」という男が、物語の中で不穏な存在感を発している。

物語終盤で、生きていくこと、未来を知ることを、長い本を読み進めていくことにたとえているのが素敵だと思った。
生きていれば、辛いこともあるし、未来が気になることもあるけれど、それでも、分厚い本のページを一枚一枚めくって読み進めるように、長生きしていればやがて、今は見えなかった未来を知ることができるのだな、と。
そうしていれば、思いもかけなかった嬉しい未来に出会えることだって、あるのかもしれない。
そんな風に思えた。

本人にお会いしたことなんて一度もないけど、「加納朋子さんって、やっぱり絶対良い人だよな」と、私はこの本を読んであらためて確信したのだった。